タクシー運賃規制訴訟について

タクシー運賃規制訴訟

初乗り510円など「公定幅運賃」の下限より低い運賃で営業をしていた大阪のタクシー会社が、国土交通省の行政処分の差し止めを求め、国を提訴、タクシー会社側が勝訴しました。このまま国が控訴せず判決が確定すれば、タクシー会社が初乗り510円のまま営業を続けられることとなります。

この訴訟の背景にはタクシー業界に対する規制の緩和と強化の変遷がありました。2002年、小泉首相の元、道路運送法改正によりタクシー事業に対する規制緩和がなされ、その結果、参入する企業ならびにタクシー台数が増加しました。しかしながら、その後、景気の悪化に伴うタクシー利用者の減少などによりタクシーは供給過剰となり、タクシー事業者の売上減少、タクシー運転手(ほとんどが歩合制)が売上確保をするために休憩をとらずに営業をするなど労働条件の悪化が生じたという声を受け、「議員立法」という形で「タクシー適正化・活性化特別措置法」が2014年1月に改正・施行されました。そして、その法律の中で、タクシーが多い地域では国の定めた範囲内の初乗り運賃(公定幅運賃)が義務化されました。 


台数規制も同様ですが、消費者にとって公定幅運賃の導入による価格統制はタクシーの気軽な利用を遠ざけるなど、利用の選択肢を狭めるものでしかありません。公定幅運賃の導入により、事業者の健全な営業ならびに安全なサービス提供が実現されるという意見もありますが、価格の設定は市場競争のなかで企業努力の成果に委ねるべきですし、利用者の安全確保に対する規制は価格統制と別に考えるべきです。今回、司法の手によって、事業者の価格設定の自由が守られることになったことは、同時に消費者の選択の自由が保障されることにもなりますので、当会としてはとても喜ばしいものと受け止めています。


さて、今回は国の規制強化に対し事業者が自由な競争を求め提訴したものでした。本当に生き残るためには消費者に選択されるサービスでなければなりません。今日、海外ではUBERなどのタクシーと競合するサービスなどがいろいろと話題となっています。タクシー事業者が市場において活発な競争を行える環境がないと、こういったタクシーと競合する新たなサービスが日本に参入した際、タクシーが消費者の選択肢から外れるということもありえます。


ダーウィンの言葉にこういうものがあります(小泉首相も当時引用しました)。

生き残るものは、強いものでもない。賢いものでもない。唯一状況の変化に対応できるものだ。


常に変わる状況の中で、規制を強化し、変化を妨げることが本当にその業界やそのサービスを享受する国民にとって良いことなのか。当会としては、タクシー業界に限らず、様々な業界をとりまく議論について、消費者の視点から、議論に参画していく必要があると考えています。


格安タクシー勝訴 大阪地裁、国の変更命令認めず:日本経済新聞

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG20H7T_Q5A121C1CR8000/


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