宅配便の再配達問題

宅配便

小さなものから重いものまで、自宅玄関まで届けてくれる宅配便は、通販を利用する消費者にとってはなくてはならない存在です。近年のネット通販などの普及にともなって、宅配便の取扱件数は2009年から2013年の5年間で13%(4.3億個)も増加しているとのこと。


その中で、宅配便は性質上一定の割合で不在のための再配達が発生しており、取扱件数の増加に比例して再配達の件数も増えてきています。この不在時に宅配便を再び届けてくれる再配達という制度は、今の生活に欠かせないとても便利なものですが、再配達による環境への影響や、再配達により発生する労働力のコストも相当のものに上っているようです。


こういった近年の再配達増加の問題をうけて、国土交通省が学識者、宅配事業者、通販事業者と共に「宅配の再配達の削減に向けた受取方法の多様化の促進等に関する検討会」を立ち上げ、先日報告書を公表しました。


当該報告書によれば、再配達のコストとしては、再配達にかかる労力は年9万人分、再配達によりトラックから排出されるCO2が年間42万トン(山手線の内側の2.5倍の面積のスギ林の年間の吸収量に相当)にものぼるそうです。再配達という制度は非常に便利なものですので、このコストをゼロにはできません。しかし、このコスト(再配送という労務に対して支払う賃金や環境負荷)は一回の配達で荷物を届けられれば発生しない、その意味で無駄なもの(社会的損失)であることは明らかです。

だからこそ、この再配達の問題は、配送業者の「コスト削減」という観点はもちろん、消費者の側からも、環境負荷や労働コストの削減のために、今まで以上に真剣に取り組んでいかなければなりません。


ちなみに、先ほどご紹介した報告書では、今後、以下の課題に取り組むとの報告がされています。

1.消費者と宅配事業者との間のコミュニケーション強化

2.消費者の受取への積極参加の促進

3.コンビニ受取の地域インフラ化

4.鉄道駅等での受取インフラ整備


参考: 宅配の再配達の削減に向けた受取方法の多様化の促進等に関する検討会」報告書の公表について 


経済産業省の調査によると、楽天等の大手ショッピングモールで3〜4割、zozotownでは半分以上がスマートフォンを通じて取引され、年々スマートフォン経由の取引は増加傾向とのこと。そういった背景からすると、消費者に対し配達状況を通知したり、配達日、時間帯などを指定することができるアプリやウェブの導入などといった、消費者と事業者のコミュニケーションの強化、推進がされると再配達抑制に大きな効果をもたらすことは容易に想像がつきます。


また、最近はコンビニや宅配ボックスで荷物を受け取れる仕組みも普及していますが、仕事の行き帰りに使う駅や等で受け取れるような取り組みも進んでいくようですので、こういったインフラを今迄以上に使っていくことを考えるべきだと思います。


なお、海外ではドローンを使った宅配の実験が行われています。ここ日本でも政府が新産業育成策の一環でドローンを使った宅配の商用化を検討していると先日発表がありました。もしかしたら、近いうちに受け取る時間と場所を入力すれば自動的に荷物が届くようになり、そもそも再配達という概念がなくなるかもしれません。 


今回は再配達という制度に目を向けましたが、この問題に限らず、これからは消費者としても、「便利」の裏側にあるコストに目を向けて、今まで以上に考えてサービスを使っていきたいところです。



参考:

宅配の再配達の削減に向けた受取方法の多様化の促進等に関する検討会」報告書の公表について

http://www.mlit.go.jp/report/press/tokatsu01_hh_000234.html


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